音の種類・場所に応じた防音材の適用
防音材は、遮音材、制振材(防振材)、吸音材の3つの製品(素材)を総称したものです。このうち、制振材には振動を絶縁する絶縁材も
含まれます。たとえば、石膏ボードは遮音材に該当し、遮音ゴムは遮音材であると同時に制振材でもあります。
→ 防音材(参考ページ)
→ある古い賃貸マンションの床から、階下からと思われる足音や振動騒音が聴こえて眠れないので、DIYで対処したいという相談者に、床に
「絶縁材と2種類の遮音材」を重ねて敷き、つなぎ目を気密シールするように提案しました。対策の結果、6割から7割程度騒音が小さくなったという
ことでした。費用対効果の高い処方箋を提示できた事例です。
*主な騒音の主成分が固体伝播音であり、遮音材だけでは対処できないと判断しました。
防音材は、対象となる音が「固体伝播音」「空気伝播音」あるいは同時に発生するものかにより、使用する内容が異なります。たとえば振動音 など固体伝播音に対しては石膏ボード、鉛シートを重ねるだけでは減衰させることができませんが、遮音ゴム・樹脂やフェルトなどを伝播経路に 挟むと減衰させることができます。このような対処工法や防音材の選定が処方箋に該当します。
また、防音構造を限られた空間の中で、過重量にならないように構築するためには軽量な吸音材の併用は欠かすことができません。天井の防音施工 には遮音材にシフトした工法は物理的に無理であり、天井裏に吸音材を積層して充填することにより音を吸収し減衰させることが現実的です。
DIYと防音材の活用留意点
通常、室内でのDIY防音対策は、天井・壁・床に露出させて張り付けたり、敷くことが多いので、空気中に臭いなどが揮発し使用者が吸い込むことに なります。法的にはF☆☆☆☆認定の製品を使うことが基本です。しかし、グラスウールやロックウールのように繊維が空気中に飛散し、過敏なかたが 喘息のように咳き込んだり、アレルギーのような症状を起こすことがあります。基本的に飛散する製品は室内に露出させて使わないほうが無難です。
また、直射日光が当たったり、室温が高くなると臭いが気になる製品もあります。たとえば遮音ゴム、アスファルトマットです。このうち、遮音ゴムマット 製品は合成ゴム(樹脂製品)で床暖房対応製品であれば表層部分に使用しても通常は問題ないと思います。使用箇所に制約がある製品があることを 留意してください。
ちなみに、発泡スチロール・ネダフォームなどの発泡材は、断熱材であり、吸音材・遮音材ではありません。逆効果になる場合がありますのでご注意ください。
防音エピソード・豆知識の目次(記事の一覧)
- 防音材にも処方箋がある (基本的な種類と留意点)
- マクロな防音室の計画論 (建築業者、建築士のレベル、リスク回避)
- 石膏ボードの遮音特性と活用 (透過損失の周波数特性に着目)
- GL壁と鉛の遮音効果 (鉛シート・遮音パネルの迷信)
- マンション二重天井の防音対策 (古い遮音設計マニュアルからの脱却)