マンション二重天井は重量衝撃音には共振体となり逆効果になる
マンションなどの二重天井は上階からの重量衝撃音(足音、重い家具を引きずる音、重量物の落下音、楽器の重い振動音など)に対しては 共振体となり、主に31.5~63Hzの周波数帯において共振による遮音低下が起きる。
天井裏の空気層がバネのように共振し、同時に天井の軸組下地とボードを振動させて空気伝播音と固体伝播音が伝わり、階下に騒音として 発生する。これを軽減するための防音工事は大半の専門業者にも具体的なノウハウがなく実例がネット上にはほとんど出てこない。
具体的な騒音伝播のメカニズムや対処法を知らない業者が無責任に石膏ボードと遮音シートや鉛の遮音パネルを重ねて施工することを推奨しているが、 これは低周波の周波数帯においてさらなる騒音増幅につながり、重量衝撃音の主成分である低周波音(100Hz以下)の防音効果がないだけでなく、 悪化させるリスクがある。
二重天井の騒音は遮音・制振・吸音の複合的防音構造で対処するしかない
柔軟性のない遮音材(石膏ボード、鉛などの遮音パネル)、制振効果のない遮音シート・塩ビシートを重ねて施工しても重量衝撃音には
効果がなく、かえって低い周波数帯の騒音が全体的に目立つようになる場合がある。
また、古い遮音設計マニュアルに記載されているグラスウールの充てんは、低い周波数帯にはほとんど効果がなく、中途半端な空気層は重低音
の共振を起こし、防音効果が上がらない。
改善するためには、柔軟性のある遮音材と制振材、吸音率の高い吸音材を総合的に活用する設計・施工を立案し実行するしかない。
ちなみに環境省のマニュアルでは、低周波音(100Hz以下)対策には厚さ10ミリ以上の面密度の大きな制振層を推奨している。
天井の軸組の絶縁や吸音層、制振材・遮音材など具体的な仕様を作成し、実績のある施工チームが担当して初めて、騒音を減らすことができる。
二重天井の完全防音は不可能であり半減~1/4程度に騒音を減らすことが現実的な施工の効果である。
*天井騒音・振動音
*天井防音の実例
防音エピソード・豆知識の目次(記事の一覧)
- 防音材にも処方箋がある (基本的な種類と留意点)
- マクロな防音室の計画論 (建築業者、建築士のレベル、リスク回避)
- 石膏ボードの遮音特性と活用 (透過損失の周波数特性に着目)
- GL壁と鉛の遮音効果 (鉛シート・遮音パネルの迷信)
- マンション二重天井の防音対策 (古い遮音設計マニュアルからの脱却)